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待つ君
あの日、夕暮れに染められた君を見た。その頬に伝うものの意味なんて分かりたくなかったのに、いつも君を見てきた僕にとっては大層な想像をする必要もないくらい容易に分かってしまったんだ。
君が何をしたのか。誰が原因なのか。
許されるなら、君の心を引き裂いた相手を殴りに行きたかった。
けれど君はそれを望んでいないから、僕はその場で君を見ていた。
声をかけることすらできずにいた僕に君は精一杯の笑顔で言った。
「フラれちゃったよ」
ぼろぼろと涙を零しながら君は笑っていた。
君をこんな状態にした相手が憎い。君の想いを踏み躙る相手が許せない。
だけど一番許せないのは、雨の中の陽だまりのような君を美しいと思ってしまった僕自身だ。
「彼だけが男じゃないさ」
「そうね」
「君の魅力が分からないなんて、彼は見る目がないんだ」
「いつも相談に乗ってくれてありがとう」
「役に立たない相談相手でごめんな」
「聞いてくれるだけで助かっているのよ」
君が誰のものにもならなければ、僕は君の相談相手で有り続けられる。
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