エピローグ 藁の人形

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ほんと、嘘はあまりいいことにならないわ。それが自分についているものならなおさらそう。どういう心情でもってそうしているのかしらね。そうは思わない? だからってそんな理由で嫌いになったりよそよそしくはしないものよ。だって何回も受け入れる二人は、受け入れてくれるあなた達はやさしいもの。 いいえ、やさしいのね。あなた達は。 ねえ、彼女はいったいどこまでを彼に伝えたものかしら。彼を取り巻き、彼が身を置いているその不可思議なる運命に関してのどこまでを。 全てのことを知ってしまった彼はやはり彼女のもとへ歩み寄ることを躊躇してしまうのでしょうね。そうあったとして誰も彼を責めないし私なら慰めてもあげたいくらい。長く長い間彼女をじっと見守ることになっとして、それは許されることなのだと思うわ。 彼の優しい眼差しの中で彼女は彼女なりの理由を胸に抱いて、彼女しかしないようなとてもユニークな旅をするの。そしてその人が毎夜見る夢がどんなものかは知らないけど、それはいつか誰か達が通った旅路を遡るものになる。 でも一人の旅はやっぱり過酷なものではあるしそれ以上に寂しく映ってしまってね。彼はその度に酷く心配し心痛めるものだけど、それでも彼は彼なりの思いを抱えて彼女をただ眺めるだけ。繰り返しを止めるためだとか、そうする以外に運命から逃れる方法がないだとか。 彼女のあずかり知らないところで? それがね、悲しいことに彼女は知っているのよ。彼女は本当のところで彼のことをちゃんと知っているの。 自分を見守っていることも、姿を現して歩み寄ることに躊躇していることも。もしかしたらその理由だって全てにおいて。 そうしたところで彼女もまた彼に会おうとはしないものよ。会おうとはせず自身の近からず遠くも無い様な位置に隠れ潜んでいるであろう彼をただ感じ取るだけ。 彼女はなにもしないのか?そうね、彼女は彼に委ねているみたい そうした二人の交わらない旅の中、彼女は長い間彼を待ち続けることになるものだけどそこに不安は無い。むしろ彼女としてはいい気分なの。なんでだかわかる?
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