エピローグ 藁の人形

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だって彼女は知っているのだもの。なにを知っているか?彼はいずれその足を踏み出すのよ。ちゃんと彼女に向けて。 どうしてかなんて知らないわ。結果がそうなのだもの。そう決まっているの。彼はすべてを知ったところでね。 それがわかっているから彼を待つことは心地がよくてしょうがない。本当よ。直接そう聞いたこと。彼女が話したことだもの。 そしてあの人はこうも言っていたわ。すべてを思い出してしまったところで、それでも旅を続ける彼はやっぱり優しいのでしょうね。 ねえ、とてもお似合いの二人だと思わない?彼らは理想の二人にはなれなくても、きっとこの世界に存在すべき人達にはなるわよね。 そういう男女がいる世界であるべきだとまでは言わないし、世界の誰かがその目の前の誰かにでもそんな約束をするだけでいい。そう約束するのは誰か?誰でもいいじゃない。無数に存在する男女の内の彼か彼女がその隣にいる大切な相手にした冗談みたいなもの。 もしくはたとえそう約束してくれる人や、二人に存在して欲しいと言ってくれる人すら誰一人いなかったとして私がいるわ。 それともそう思う私ってば、できるならそう思うのは自分だけにとどめ置き、他の誰にも知られずただ一人で抱え込んでおきたいなんて、あなたはそう思ってる?
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