エピローグ 藁の人形

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それは人の大きさ程もあるような大したものでね。その形状は女性にそっくり。 一目でもいいしじっくり眺めてもいい。見れば見るほどそこらにいる女性よりはずいぶんと美しい顔立ちをしていることに気づくものだけど、それには色が塗られていないものだから人と間違えることは無い。それに重さだって並の女性と比べれば全然違っているし、やっぱりそれは人の女性ということにはどうしてもならず、ただの人形に過ぎない物。 でもだからこそ彼の旅はとても辛く苦しいものではあるわ。人が見るよりもずっと。 無数の都市を、砂漠を、それ以上に過酷な岩の大地を巡ってはその旅の半分にも満たないわ。彼はとても遠くに行こうとしているから。 どうしても行かなければならないの、彼の旅はそういうもの。 多くの旅人は孤独を抱えて旅するものだけど彼もまた同じでね。それは希望のあるものでもなく、その目は期待に輝くことは無い。何のための旅かあなたはまた一段と興味を示して然るべきね、あなた以外の人ならきっとそうしてくれる。 その旅に秘密があるのならそれはやっぱりその人形にあると思うものでしょう?果てしない道のりを抱えて、そして引きずったところで進み続けて行くには憎らしいほど重いその人形。そろそろあなたもその人形の中身にこそ意識が向き始めた頃なのでしょうね。それがそれほど重く彼を苦しめる要因はやっぱりその中にあるもののせいであるに決まっているもの。 鉛なんかじゃないわ。金塊でもない。その人形の中にはね・・気になってくれている? どこかとても遠く、生涯を掛けてやっとたどり着くことが出来るくらい果てしなく遠い場所にあると言われる大きな国。その中心に建つ煌びやかなるお城には信じられないほどの美しさを持つと言われる姫がいるらしくてね。 人形の中身は彼女が産み落としたものが入っているの。
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