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たとえそうすることが出来たとして、それはやっぱり繭の思惑通りのことなのではないか。なにをどうしたところで結局は繭の意図に沿ったことで、それに抗うことは叶わないのでは。
そう思っていい根拠はないしひどく悲観的だけど彼にはそう思えて仕方が無い。それは彼だからそうなのではなく、きっと彼におけない誰であってもがそう。彼の旅を経験したなら誰においてもがそんな風に思えてしまうものなのよ。
でもそう思うなら彼はその後、その繭が消えた後をどう想像するのかしらね。直接会って聞いてみたいものだわ。それともまるで想像ができないもの?それは彼にとって、誰にとっても思いもよらないことになるものかもしれないものだから。
ねぇ、あなたはどう思う?彼についてじゃないわ。だからと言って例の二人についてでもない。あなたまでが彼らにばかり関心を持ってしまっては私達って何なのってことになってしまうもの。せめてあなたぐらいは私に、私だけを見つめそして私だけのことを考えておいてもいいと、私にそう言うだけの権利はあると思わない?きっとそう。
あなたはだからこんな話をする私を寂しげなものとして思うべきなのよ。いいえ、そう思っているのでしょうね。かわいそうでそして話す話題に乏しいばかりに人のあれこれに想いを巡らせては一人で口に出すだけの、そんなつまらない存在だと。
そうかな?
・・・。
君の話しかけるその人形は本当にそう思っているだろうか?
・・さあ。本当のところはわからないわ。
それは君が形作ったものなのに?
これは確かに私が蔓で形作ったものだし良く出来てはいるけれど。見た目がしてこれは私じゃないもの。この人形の気持ちがわかるという人がいるのならそれはあなた。そうでしょう?
そうだね。
終わり
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