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私はまた夢を見ているようだ。
さっきまで部屋にいたはずなんだけどね……
今日も小さい私が私を遠くから見下ろす。
その表情はいつもより嬉しそうだ。ここ最近、彼女は私の夢に現れては私をニコニコしながら見ている。
すると今日の彼女は暗い闇の世界を指さして言った。
「見てよ、君の世界をさ」
彼女のその言葉で私の世界は一変した。世界に鮮やかな色がついたのだ。
この世界は闇の世界じゃなかったのだ。辺りには薄ピンクの花が舞い、時折吹く風は暖かくて気持ちがいい。小さかった私はすっかり私と同じ大きさの大人そのもので、私と違うのは髪に髪飾りをを付けていること。
そして、彼女は大きな木の上に座っていること。
「君が気付いてくれるのをずっと待っていたんだ」
微笑みながらそういう彼女はあの少女の面影を残している。
「ほら両手を見てみてみなよ?」
コテンと首を傾けた彼女が指さした先にいる私はその両手を見た。
そこには花束があった。両手に一束ずつあるピンク色の花束。
「君に餞別……ほんと、やっと渡せたよ。苦労したんだからね」
けらけらと笑う彼女。
何となくだけどこれが何か私にはわかる。
私は両手に別々の一閃を持ちながらこの世界を彼女をいつまでも眺め続けた。
そして私達はある光景を見た。
意識が薄れていてよくは見えなかったけど幸せそうな光景。
それは私達に訪れる未来の光景だったと思う。
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