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「別に、ここら辺では珍しいことではないわ」
ね、とストラス夫人はマリアに同意を求めた。
「確かにお隣には、ゲイの夫婦が部屋を借りている」
マリアは、淡々と事実を答えただけだが、ストラス夫人はさらに笑みを深くした。
「恥ずかしがることなんてないのよ」
エリザベスが、訂正しようと口を開くとタイミングよく、携帯の呼び出し音が鳴った。
散らかったテーブルの上から、スマートフォンを取り、マリアが電話に出た。
「場所はどこ?五分で行く」
マリアは、通話を切ると壁にかけてあった、小さな肩掛けカバンを取りスマートフォンをしまった。コートかけにかけられていた薄手のベージュのトレンチコートを着た。
出かける準備のようだ。
「アマンダ、ぼんやりしてるとデートに遅れる。その彼氏と結婚したいなら遅刻は厳禁。ストラスさん、私はこれから出かけます。夜は遅くなると思います」
さっそうと鞄を持って部屋の出口までマリアは歩きながら、アマンダとストラス夫人を部屋から追い立てる。
「リジー、良かったら座ってて。三階のベッドルームはすぐに使えたはず」
マリアは、暖炉の前のソファを指して早口でまくし立てるマリアを、呆然とみていた。
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