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フィールドワーク
「縫いぐるみを置く趣味でも?」
エリザベスは、テーブルに置かれた本の上や、マントルピース、植木鉢の影にみえる白いもじゃもじゃのテニスボールぐらいの毛玉のような縫いぐるみをみながら言った。
「やだ、マリアは一見そういう趣味がありそうな顔立ちだけど、そんなもの置かないわ」
アマンダがおかしそうに笑った。エリザベスは驚いたように目を見開いて、テーブルの上の白いもじゃもじゃを見て、アマンダに振り返った。アマンダには、白い毛玉が見えていないようだ。
「置く趣味はない」
マリアの声に釣られるようにして、エリザベスは視線をマリアに向けた。マリアは、テーブルの上の本のあたりに視線を向けていて、エリザベスの視線に気がつくと、口角をあげてにやりと微笑んだ。
チシャ猫のような笑みだ、とエリザベスは思った。
「部屋はどうするのかしら?ベッドルームはもうひとつ三階にあるけど、恋人同士なら一緒の部屋がいいかしら?」
ストラス夫人の言葉に、エリザベスは「なんてことを言うんだ」という表情をして振り返った。
「ベッドルームは借ります」
エリザベスが、さらに続けて恋人同士ではないと訂正しようとするのをストラス夫人が遮った。
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