待ち望んだことを知らない

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「明日ね」 「あぁ、だから夏菜子の飯も今日で最後だな」 「そんなこと言わないでくださいよ、また戦場から帰ってきたら二人で食卓を囲みましょ」 明日旦那様は三度目の戦場に行ってしまう、というより連れされてしまう 強制徴兵という国の法令によって… だが、旦那様と言っても結婚も間も無く、子供さえ預からずである。 「うまいなぁ、夏菜子の料理は…本当に」 私はそんな旦那様のふとした言葉でさえ、歯を噛み締めて泣くことを堪える他ならなかった。 なぜなら、私が泣いてしまえば旦那様も涙腺を緩め涙をこぼしてしまうかもしれない。もしくは、旦那様の覚悟を私が揺るがせてしまうかもしれない。そう考えた結果だった。 「そんな、最後みたいな言い方やめてください」 「それもそうだな、また頑張って帰ってくる」 旦那様は米粒一つ残さず平らげた。 「食った食った」 「お粗末様でした」 「じゃ、俺は明日に備えて睡眠を取る」 「はい、後はやっておきます」 旦那様は寝室の引き戸に手を掛けたところで、私の方を見ず、ありがとうと添えて寝室へと姿を消した。
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