待ち望んだことを知らない

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私はその旦那様が閉めたいつもはない寂しさに溢れる引き戸を、少しの間だけ違和感を覚えてじっと見つめていた。 私自身も後を済ませると、すぐに寝室へと向かった。そして、少しでも長く旦那様の側に居たいという強い想いを持って静かに目を閉じ深い眠りへと入った。 ー翌日の早朝ー 私は旦那様より早く起きて、いつも以上に腕をふるって朝食を作った。 「おはよう」 「おはようございます」 旦那様が起きてくるとほぼ同時に朝食を作り上げ、食卓に並べた。 「おお、昨日の晩飯より美味そうだ、それではいただきます」 「どうぞ、お召し上がりください」 旦那様は黙々と箸を進め、皿の上のおかずをどんどん食べ進めていく。 「おい、夏菜子は食わないのか?」 「はい、旦那様に力をつけてもらいたいですし、願掛けも兼ねて遠慮させていただきます」 「願掛け?」 「はい、もしここで食べてしまったら食卓を囲んでしまうことになってしまうので」 すると、旦那様はそんなことを気にしてるのか、と言い箸を休めた。 「夏菜子、飯は一緒に食った方が美味い。それに、俺はお前と食った方が力がみなぎる」 「はい」 「だから、食え!俺に帰ってこれるだけの力をくれ!」 私はそんな旦那様の優しい言葉に対し、何も言えなかった、いえ、嬉しきそして恥ずかしきことこの上なかったため?を赤らめ口を開かなかった。 そして私は箸を取り旦那様と食卓を囲んだ。 「やっぱり、夏菜子と食う飯ほど美味いものはこの上ないな!」 「私もです」 食事を終えると旦那様は戦闘服へと着替え帽子を被り玄関へと向かった。 「それでは行ってくる」 「お待ちください、私も駅までお送りします」 そうかわかった、と旦那様は玄関で腰を据えた。 「用意できました」 「では行こうか」 その時私は数年ぶりに旦那様と手を繋ぎ家を出た。
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