第一話

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ところが、手習所を開いた矢先に、父が卒中であっけなく逝ってしまった。 まるで、実家に戻ってきて居づらい娘に、安住の場を与えられたのを見届けたかのごとく。 小夜里は父から手習所を引き継ぐことを決意し、しかもここで通いの下働きのおきみ(・・・)を雇って一人住まいすることにした。 兄が迎えた(あによめ)も、これで少しは過ごしやすくなるであろう。 母や兄など周囲が再嫁(さいか)を望んでいたことは承知していたが、婚家を追われた身である小夜里にとって、その道はなかった。 場所柄、町家の腕白な子どもたちばかりが通う手習所は、活気に満ちあふれていた。 子に恵まれなかった小夜里が、他人(ひと)(さま)のとはいえ、こんなにたくさんの子どもに囲まれるようになるとは、不思議な心持ちがした。 しかし、その半面、これぞ「因縁」という気もした。
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