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子どもたちを其々の家へと送り出してから雨が降ってきたので、ほっと一安心していたところだった。
手習い所は先刻までのけたたましさが幻のように、ひっそりと静まり返っていた。
今はただ、子どもたちの汗ばんだ土臭いにおいが、仄かに残っているだけだった。
小夜里は入り口まで歩いていき、戸の隙間から外を覗いた。
門の下に袴姿の男の後ろ姿が見えた。
「……大方、雨宿りでもしておられるのであろう」
小夜里はそう呟いてから、振り返った。
その後ろでおきみも、背伸びして訝しげに外を覗き込んでいた。
「おきみ、夕餉の支度が済んでおるのなら、もう家へお帰り」
小夜里は微笑みながら、そう指示した。
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