第一話

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長屋に住むおきみ(・・・)が裏口から帰って行ったあと、雨脚がさらに強くなってきた。 御大尽が住む長屋門ならいざ知らず、軒下ほどの覆いしかない門では無きに等しい。 意を決した小夜里は玄関を出て、番傘を開いて門へ向かった。 「あの……もし……」 小夜里は門の下の男に声をかけた。 「ここにおられては、御身が濡れてしまうゆえ、どうぞ中へお入りくだされませ」 小夜里は番傘を男の方へ向けた。
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