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「旦那様はなにを聞いても素知らぬ振りで……さすれども、姑上がたいそうご心配なされ取り乱されたゆえ、わたくしが参りましょうと申し上げると……」
そう云って、千都世も目を伏せた。
「自分の代わりに娘の力になってほしい、と初めて嫁のわたくしに頭をお下げに……」
あの気位の高い母が、と思うと、小夜里の目に込み上げるものが迫ってきた。
小夜里は、改めてしっかりと、白い紐を握りなおした。
そして、腹の中の子の動きにだけ、気を集めた。
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