第四話

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第四話

小夜里の話は続いた。 町で名の通った酒屋の娘のおりん(・・・)が教えを乞いに来て以来、町家の女の子たちがぽつぽつとやってくるようになった。 兄に頼らずとも、自分の喰い扶持(ぶち)くらいはなんとかなりそうだった。 やがては父のような藩の重責を担う身を目指す兄は、世間体を(おもんぱか)って町家で手習所を続ける妹にはよい顔をしない。 今でも時折(ときおり)(あによめ)を介して、子持ちのやもめ(・・・)だの、家督を子に譲った隠居だのとの縁談を持ち込んでくる。 生まれながらの「武家の女」そのものの気性の母も、娘が再び嫁ぐことを強く望んでいた。 だから、自然と実家へは立ち寄らなくなった。
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