第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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寝ぼけ眼を擦る木葉刑事も、ジャージにネクタイを回すだけしてコートを羽織った。 二人して留置場に向かえば、夜勤をしていた警察官に迎えられ。 「波子隅が、朝に叫び出しまして。 木葉刑事、貴方を呼べと喚くのです」 「ふぅん」 頷いた木葉刑事は、波子隅の居る留置場へ。 鉄格子にへばりつく波子隅は、木葉刑事を見るなり。 「おいっ、たっ・助けてくれっ! 居るっ、い・いっ、居る。 あの女が居るっ!」 平常心など見失った、恐怖に戦く顔をして言う。 手を伸ばして、胸ぐらでも掴まれそうだ。 何故、波子隅がこうなったか、理由は解っていた木葉刑事。 呪う者を視せたのは、紛れもなく自分である。 が。 「女って、何処に。 大体、どの女さんで?」 完全にすっ惚けた。 泣き顔になる波子隅で。 「あんたが言っただろっ!? 俺がアイドルを殺したってっ!!」 これまで頑なに供述を拒んで来た波子隅が、自分からこの話を持ち上げる。 だが、呆れた顔をして見せる木葉刑事。 「おいおい、自分は殺ってないって言い張ったのは、御宅じゃないの。 今更に認めるのかよ」 「認める、認めるともっ! たっ、逮捕、逮捕してくれっ!」 驚く警察官達に、里谷刑事や起きた別の刑事も眼を覚ましてたじろぐ。 だが、木葉刑事は遣る気も無さそうに。 「全く、正月の朝だからって、警察をからかって遊ぼうって腹じゃないだろうな。 昨日まで供述を否定していた奴が、いきなり手を返すなんて信じられるかよ。 然も、時効かも知れない案件を喋るなんて、舐めてるに程がある」 全く以て信じられない、そんな態度すら見せた木葉刑事。 「頼むっ、何でも話すっ!」 「何でも話す? 何を話すって言うんだよ」 「あのっ、自殺した女子高生に薬を飲ませて抱いたのは、間違いなく俺だっ。 殺されたあの女は、俺に薬物を盛れば自由に出来ると言った! 無理矢理に飲ませはしなかったが、親にばらす、あの淫らな映像を世間に撒くと脅したのは、確かだっ!」 完璧な自白である。 慌て始めた刑事が美田園管理官に連絡すべく、泊まっている尚形係長の元へ走った。 だが、木葉刑事は寧ろ覚めて。 「“自白が証拠の王様”、なんて時代錯誤だよ。 明らかな物証なくして、何が“認める”だ」 と、去ろうとした。 「待てっ! 俺のやった証拠は在るっ!! 頼むっ、言うから調べてくれぇぇぇっ!!」
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