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尋常ではない状況で、新な一年は幕を開いた。 飛び起きて来た尚形係長は、木葉刑事と里谷刑事に改めて事情聴取を指示。 手柄を焦る所轄の刑事が名乗り出るのを一蹴した辺りは、やはり木葉刑事を含めた一課の刑事を頼ったのだろう。
朝の9時を前に、髪を縛らずノーメイクで駆け付けた美田園管理官が目にするのは、麻薬御殿の情報以外を一切話さなかった波子隅が、自分の罪をペラペラと喋る様子である。
マジックミラー越しに、隣室へ入った美田園管理官が。
「これは、一体どうゆう事で? 誰か、経緯を話せる人は?」
昨日から、波子隅の事を見ていた看守係の巡査が。
「朝から急変したとしか…。 一昨日、留置場に戻る波子隅へ、木葉刑事が顔を見せるなりに」
“いい加減、喋る気に成らないの? 御宅の目撃映像から、あの事件現場の家を紹介されたお客さんまで確保されて、ぜ~んぶ告白(ゲロ)してるんだよ”
こんな言い方で、昨日までの波子隅が口を割るとは思えなかった。
“フン、有益な情報をいっぱいゲロしてやったさ。 アメリカみたく、情報と引き換えに譲歩して欲しいね。 その辺の話が出ないなら、もうお口にチャックするぜ”
正に、譲る気もなければ、自分の罪など喋らないと言っている。 裏を返せば、何かを隠していると言って良いぐらいだ。
このやり取りを含めて全て見ていた警務官だが。
「別段、木葉刑事が波子隅に詰め寄ったり、触れたりする事もなく」
“御宅さんが罪を認めないと、身勝手にされた人は浮かばないよ”
「と、立ち去り。 また、波子隅も」
“死んだ人間に何の力が有るんだよ。 化けて出れるもんならば、出てみやがれってんだ。 幽霊だの化け物だの、居ればの話だがなっ”
「こう言っては、留置場へ」
話を聞く美田園管理官は、それでこの変化など想像が出来ず。
「どうして、何で話す気に…」
警務官は、困った顔のままに。
「それが・・波子隅は視た、と」
その話に、尚形係長が。
「おいっ、その話は止せ」
止めに入るのだが。
「何か? 全て話なさいっ」
美田園管理官が警務官に向き直る。
「あ、はぁ」
自分から言おうとしながら、問われると口を濁す警務官で。
「夢でも見たとしか言えない話ですが。 波子隅は、自殺した女子高生や自分が殺したアイドルの女性の幽霊を視た、と…」
「幽霊・・」
呟くだけした美田園管理官で、また波子隅の方を見ると。
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