僕の好きな人

2/3
前へ
/3ページ
次へ
好きな人が居たんだ。 その人は、とても真面目で仕事熱心。頼り甲斐があって、誰からも信頼されていたんだ。 僕は彼女にとても感謝していたんだ。  同じ部活で、何度も支えられて、何度も助けてくれた。そんな仕事仲間みたいに思っていた彼女。  でもね、ふとある時彼女の満面の笑みを見てしまったんだ。今までに見たこともないような満面の笑み。  みんなで行った遊園地。 ジェットコースターの隣で、一人楽しそうにしてる君は僕を見て言ったんだ。      どうしよう、怖いけど楽しみ。 無邪気に笑う君に僕は心を奪われてしまったんだ。       誰よりも人として尊敬してたんだ。       人として好きだったんだ。       決して卑しい気持ちや      如何わしい気持ちはなかった。  だけど、その一瞬で君は「とても素敵な女性」に変身したんだよ。 僕は最低なんだ。だってその時他に付き合ってる女性がいたのだから。 ずーっと支えてくれた彼女がいた。大切な彼女だった。 でもたったその一瞬で君は長年僕が守って来たものを 掻っ攫って行ったんだ。なんて恐ろしい人なんだろう君は。 何度も考えたんだ。どうすればいいのだろうか、僕はなんと愚かなんだろうか。  別に好きになってしまった君には触れたいとか思ったことはない。 ただ笑顔が綺麗だったんだ。 努力してる姿が美しかったんだ。 真面目に生きる姿が眩しかったんだ。 強くあろうとする弱さがとても健気だったんだ。  僕がまだ悩んでいる時、君と僕は散歩をしたね。 夜の世田谷の風は少し冷たくて周りの家は静かに僕らを見守っていた。 僕は言ったんだ、好きな人ができてしまったって。 君は言ったよね、思い当たる人が一人いるよって。  誰?って聞くと、間違ってたら恥ずかしいから嫌だって。教えてくれなかったよね。 でもその時全部察してしまったよね。お互い察してしまったよね。  あの夜から寝れない夜がどれだけ続いただろうか。 どれだけ君を思っただろうか。 隣に別の女性が寝ているのに、全く心は休まらず君のことを思う最低な僕がいた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加