小学生(柚季-ゆずき-)と芸術家(美園-みその-)

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この街も田舎と言えばそうだが、住み心地は良かった。 住宅地の側には森林公園や山があり、空気のキレイな所は景色もキレイなんだと、オレは改めて実感した。 …けれどオレの方に問題があった。 幼い頃から転校ばかり繰り返してきたせいか、友達の作り方を忘れてしまった。 いつも仲良くなった友達ができても、すぐに引っ越しで離ればなれになってしまう。 だから適度な人付き合いしかしてこなかった。 けれど今回ばかりは話が違う。 3年後、両親は海外から帰ってきたら、この街に腰を下ろすことを決めた。 幸いにも街中に親父の勤めている会社の支社があり、その申し出を会社は受け入れたらしい。 なのでここでは友達を作った方が良いんだろうが…。 「…何かガキっぽいのばっかなんだよな」 いや、オレもガキなのは分かっていた。 今だって黒いTシャツに、黒のハーフパンツを着て、黒いランドセルを背負っている。 どっからどう見たって、小学生の子供だ。 まあもっとも、来年には中学生になるんだが…。 「だから余計にこの歳で友達ゼロはマズイよなぁ」 環境のせいか、歳の割に冷めた考えの持ち主になってしまっていたのだ。 家に帰れば祖父母が学校のことを尋ねてくる。
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