0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
君は月が好きだった。そんな君を俺は愛した。
そんな黄色くぼんやりしたモノより君の方が綺麗なのに、と何度も思った。でもそれを言ってもきっと君は喜ばない。だからただ隣で一緒に空を見上げていた。
数分に一回はこっそりその横顔を眺めた。そうしたら13回目で君と目が合った。とても恥ずかしかった。
眺めるだけじゃ足りなくなった。見つめたいし触れたかった。それでも傷つけたくなくて我慢した。
君は僕を太陽だと言った。自信と魅力に満ち溢れた天体のようだと。そんなことはないといくら否定しても、君は微笑むばかり。
青空が好き、と言ったのは嘘だ。本当は空なんて大嫌いだ。見上げたいのではない、ただ隣を見て欲しかっただけだ。
悔しくて虚しくて俺は周りを利用することにした。周りの奴らを使ってキラキラと煌びやかな世界を作った。隣で微笑む女達を次々に変えて遊んだ。
どうだ君なんて居なくても俺にはこんなにも美しい楽しい世界がある。
そう言いたくて振り返ったら、そこにはもう君は見えなかった。
慌てて探すも街は広い。
疲れ果てて見上げた空は夜が明けていた。絶望と悲しみの夜明けだ。
………そんな俺の上に、愛おしい君が落ちてきた。
最初のコメントを投稿しよう!