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風が止んだ。シャッターの音だけが続いた。
やがて、カメラの横からのぞけた丸メガネの奥を逃がさずとらえた。
「最後とか言うな! さびしくなるから! 休みになったら遊びに来るでしょ? てかその前に引っ越し手伝うはずじゃあ」
「あははは! 言ってみたかったんだ。手伝う手伝う。きみも、たまには帰っておいでよね」
「なんだよもう。うん、帰ってくるよ」
「んー、バイト増やそー」
なんなんだよもう。知らないうちに涙まで出てしまっている。けれど、身体はふわふわと温かかった。
君は伸びながら、あーん、と口を開ける。雪を食べる気だ。
カメラと鼻の頭に、ぽちりと雪がとまった。
(終)
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