待つ

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待つ

昼下がりの雲の下、男は駅前のベンチに腰掛けて待っていた。 何をするでもない。 ただ待っていた。 やがて隣に女子大生と思しき人物が座った。 それでも男は待っていた。 しばらくしてその女子大生の友達であろう人物が来た。彼女達は立ち去っていった。 そしてその空いたベンチに今度はスーツを着た男性が座った。 それでも男は待っていた。 しばらくして上司と思われる男性がやってきた。男達はまだ誰かを待っていた。そして誰かを見つけたかのように立ち去った。 そしてその後何人かが男の横に腰掛け、立ち去っていった。 もう夕方になった。 それでも男は待っていた。 皆、誰かを待っていた。友達を待っていた。上司を待っていた。彼女を待っていた。息子を待っていた。娘を待っていた。 男もまた待っていた。 何をするでもない。 何を待つでもない。 ただただ待っていた。 ここにもういない誰かを待っていた。 ここにはもうない何かを待っていた。 そしてやがて日が暮れた月の下、男は一人で帰っていった。
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