気がつけば・・・愛 想いは溢れて

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夕方の勤行を本堂の隅で一緒に受けるまで 携帯の存在を忘れていて 確認すると寛子からメッセージが入っていた 【いよいよね、あゆみに幸あれ】 短い言葉なのに またジワリと涙が滲んだ 「大丈夫?」 「うん、平気」 小さな変化に気づいてくれる良憲 ポンポンと撫でられる頭と気持ちが温まる 「あゆみさん・・・いつ引越す?」   「え?」 「だから、もう1分だって 離れたくないから・・・」 甘く囁かれるだけで胸がトキメキ そして気がつけばいつも腕の中に居て 白檀の香りが心を落ち着かせてくれる 「とりあえず今夜は泊まるでしょ? それで‥明日一緒に荷物を運んで‥」 至極嬉しそうな声に うんうんと頷いていると 「気づいたんですけど・・・ 僕‥途轍もなく束縛坊主かもしれません」 「フフフ」 「それに・・・独占欲もハンパない」 「嬉しいよ?」 窮屈な中で向き合うと 背中に手を回して密着する 「だって私に興味があるってことだよね?」 全く見向きもされなかった 17年間を思い出して気分が下がる 「興味なんて言葉じゃ足りない 29年も片想いだった僕の想いは 山よりも重いはずだから覚悟して」 「うん」 少し離れると首を傾けた良憲が 頬にチュッと音を立ててキスを落とした
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