夜に紛れて

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分かっている。仕事だと言われたら仕方がない。私はどこかで時間を潰してあなたからの連絡を待つしかない。 物分かりがいい。私はいつもそうだったのかもしれない。自分の為に何かできるかもしれなかった時間をあなたを待つためにだけ潰す。 行きたいところなんてないし、21時をすぎれば時間を潰せる場所なんてそんなにありはしない。 一人でバーに行ったとしても、あなたからの連絡があれば、飲み物を飲み干すこともせずに会計を済ませてあなたの部屋に向かう。 それがいい時もあった。それは確かで、それが続いて、そのことが嫌になったのは私の我儘なのかもしれない。 夜から朝までのほんの短い時間。その時間さえあれば幸せだと思えた時もあったのだ。 待つことに慣れようとした。それも仕方がないと。 なのに私はそれでは幸せを感じることが出来なかった。それは私の勝手な思いでしかない。 部屋の鍵は持っているけれど、あなたのいない部屋に一人でいることに意味など見つけられなかった。 ずるずると2年間そんな風にすごして、今更それを止めたいというのは私の勝手であなたは悪くない。でもこれを続けることはもうできない。私は私の人生を生きなければならない。そう思ってしまった。 だから、もう今までのような自分ではいられない。 あなたにあなたは悪くないと伝えなければいけない。いやな女になって。すべて私の我儘だと。 私の人生は私にしか生きることができないから。私はもうだれかを待つことを止める。 夜のあなたからの連絡があるまでの空白の時間に、居場所を探してさまようことはもう出来ない。 私はあなたと決別するとともに今までの私とも決別をするのだ。 誰かを待つのではなくて、自分自身のためにこの先に何が待っているのかわからない未来に前を向いて一歩を踏み出すために。 だからもう私はあなたを待つことはない。楽しそうに誰かと一緒に過ごしている人たちの夜に紛れることはもうしない。 あなたに伝える「さようなら」とともに私は私の何が待っているのかわからない明日に向かって歩き出す。 私はもう夜に紛れることはしない。誰も待つことのない私の場所に向かうのだ。 だから私は前を向いて私なりに自分の一歩を踏み出してみる。 だから今日私はあなたに「さようなら」と言いに行く。
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