2章

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「もしもし?あぁ混弥か。ごめんごめん。電話といえばFNAAAの認証IDだから。ん?あぁ、今着いたところなんだけど、審査ゲートが混んでるみたいで。あー。了解。ありがとう。今から向かう。」 待機列が並ぶ中央ゲートを後に南側に足を向けると、先ほど混弥から教えてもあらった八条ゲートへと歩く。どうやら八条ゲートは京都市民専用の入域ゲートらしく、市民以外でも京都市民の知人若しくは友人の事前申請があればそちらから入域できるらしい。 旅行鞄を抱えベンチで休む群集を差し置いて、観光地の玄関とは異なる日常の静けさと均衡がとれた八条ゲートに着くと、その先に混弥の姿が見えた。 査証を差し出すのと一緒に“玉依混弥”の名を告げると、管理官は手元にあったタブレットで事前申請の有無を確認し、それから入域手続きを終えるスタンプを査証に押した。 “ようこそ京都へ。良い日々を”の見送りと同時にゲートを潜ると、手続きを見守ってくれていた混弥が足早に駆け寄ってきた。 「無事に来れてよかったよ、淆。まぁ、これといって何か問題が起こるとも思ってなかったけどね。」 「混弥。ごめん。入域が済んだら電話しようと思ってたんだけど。駅からでも繋がるんだね。」 「あっいいよいいよ。昨日、到着時刻伝えてもらってたし。行こうか。」 地上に出るとタクシーとバスの大群が迎えてくれた。地下からは京都に卍を描く様に地下鉄が通っているらしい。 近くに車を停めているという混弥について行くと2度目なのに妙な懐かしさを抱いてしまう白のスポーツカーが路上に停まっていた。 「また、この車なんだな。」と尋ねると「嫌いじゃないだろ?」と余裕たっぷりに返された。 サイドブレーキが下ろされると車は静かに京都の街を走り出す。
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