2章

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2章

20XX年 環太平洋連合東アジア地域特別宗教都市-京都近郊 東京から大阪へ。大深度地下を走る中央新幹線に乗っていた30分と同じ時間をかけて京都へと向かう近郊鉄道に揺られている。 車窓を流れる風景はどこも東京と似たり寄ったりで、通過する駅にはどこもスマートカーが規則正しい列を成していた。 混弥が突然会いに来たのが1週間前のこと。 京都に行ってくると母に告げると「いいじゃない。いってらっしゃい。」なんて案外すんなりと受け止められた。京都が他都市と距離を置く以前を知っている人-母くらいの年齢層は、京都は心の故郷なんだと良く口にする。西方都市なら、京都よりも大阪や福岡の方がよっぽど近いのになと思ってしまう世代に、そんな古い価値観に触れること自体がもう少なくて、母の何気ない一言に世代間の価値観の差を感じてしまった。 桂川西岸に築かれた県境の壁を電車が通過すると人生初めての京都に入る。 “京都への入域には査証が必要となりますのでご注意ください”と多言語で繰り返される車内アナウンスに、東京ならFNAAAによる自動翻訳で済ませてしまっているのになんて思っていると、いつの間にか並列して走っていた小豆色の車両とシンクロするように空中ターミナルへと吸い込まれた。 新京都中央駅。 三重構造となった建物の最上階に着くとホームへと降りる。域外から入線する電車の全てがここ一カ所に集まるだけあって20近くの番線には、次々と電車が入って来ては出て行っている。 土産物屋に囲まれた待合広場から2階へと降りると入域審査を待つ人の列が目に留まった。 あぁこれは結構時間かかるのかと思いつつも列の最後尾に並ぶと、鞄の中にしまっていたFNAAAから呼び出し音がした。 090-xxyy-zz00
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