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電気をつけ、むくりと起き上がると周囲を見渡した。なにしろ二十年ほど前の話だ。捨ててはいないはずだけど、一体どこにしまっただろう。
──多分、ここかな。
小学生の頃に祖母から買ってもらった、学習机。その一番下の一番大きな引き出しを開けた。
中には小学生の頃に流行っていたプロフィール帳や、友達との手紙が乱雑にしまってあった。整理整頓が苦手なあたしは、当時、なんでもこの引き出しに放り込んでいた。
それらを掻き分け、もっと底の方へと手を潜らせる。指先に硬くてつるりとしたものが当たった。
──あった!
思い切り引っ張ると、探していたそれは姿を現した。
一冊の、本。
子供でも持ちやすい小さめのサイズで、少し分厚い。あたしは、傷がついてでこぼこした表紙をそっと撫でた。
若草色の原っぱに、白い小さな花が咲いている。その傍らに、これまた小さな赤い屋根の家と、赤い服を着た女の子が描かれた表紙だった。
懐かしい。記憶より色褪せてはいるものの、たしかにこんな絵だった。
それを机の上に置き、再びベッドに入る。
『高木朋子』
その名前を聞いたからふと思い出したんだ。小学生の時から借りっぱなしだった本のことを。
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