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きっかけは、あたしの一言だった。
四年か五年か、そこらへんだったと思う。当時、一人だけ異様な雰囲気を醸し出す少女がいた。それが『高木朋子』だ。
異様な雰囲気と言っても、別にいい意味ではない。彼女は生まれつき身体が弱く、足も手もうんと細かった。それでいて顔は真っ白を通り越して真っ青で、唇はいつも薄紫色をしていた。
体育の授業はもちろん見学。学校も休みがちだった。たまに来ても早退することがほとんどで、帰りはいつも母親が迎えに来ていた。外学習の時は車椅子に乗って、先生がそれを押していた。
小学生のあたしでもなんとなく気づいていた。彼女がみんなと違う存在だということを。
いじめられるとか、そういうことはなかった。触れてはいけないものとして皆が皆、彼女を敬遠した。彼女は『空気』だった。
そんな彼女の唯一の友達は、本だったと思う。彼女は朝学習の時間も休み時間も、ずっと本を読んでいた。
ある日あたしは、いつも通り本を読んでいる彼女の前まで行き、こう言ったのだ。
「ねぇ、いつも何読んでるの?」
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