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表紙の絵やその題名からして、どこか子供っぽい。その割になかなか分厚いので、低学年の子には難しく、高学年の子には幼稚な印象を受けた。
彼女は本から目だけを覗かせてボソボソと話した。
「そ、その……ちょっと子供っぽいんだけど……気に入ってて……。ほ、ほら、題名『ともちゃん』でしょ? 私『朋子』だし……だから……」
多分あたしは「へぇ」とか「ふーん」とか、気のない返事をしたと思う。この時あたしは本のことより、彼女が思ったよりも普通だったことに驚いた。
とはいえ、そこから急速に仲良くなる、なんてことはなかった。その次の休み時間もそのまた次の休み時間も、彼女は本を読みあたしは友達とおしゃべりに夢中だった。
ところが、五時間目が終わった直後だ。珍しく一日学校にいた彼女が、あたしの席の前までやってきた。
しばらくもじもじと手を交差させていたかと思うと、手提げカバンの中からあの本を取り出し、あたしの目の前に突き出した。
「あ……あの、よかったら……よ、読んでみて……」
いきなりのことに面食らうあたしに、彼女は返事を待つことなく帰っていった。あたしは仕方なく、その本をランドセルに入れて持ち帰った。
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