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会場に着くと、もう既に人だかりができていた。見渡す限りの黒。カラスの群れに紛れ込んだみたいで、居心地が悪い。
同級生らしき人もちらほらいた。ただなんていう子か思い出せず、こちらから近寄るのを躊躇った。二十年の月日は、人の見かけを変えてしまうには十分すぎるほどだった。
彼らは久しぶりに会った友人との会話に花を咲かせているようだった。たまに聞こえる笑い声が耳障りだ。まるで、同窓会だ、と思った。
ちぐはぐなんだ、なにもかも。彼らの会話が、声が、いちいち気持ち悪い。
そしてあたしも、そんな彼らと大差ないことを思い出し、胃の中のものを吐き出しそうになった。
やっぱり来るべきじゃなかったのかもしれない。高木さんも、本当の友達だけに送られる方が本望だっただろうに。だけど──
あたしは重い足を一旦止め、手提げの中の本をちらりと見た。高木さんの、本。いつもいつも読んでいた、本。
──だけど、やっぱりこの本は持ち主に返すべきなんだ。
あたしは手提げの持ち手をきゅっと強く握ると、前を向いて再び歩き出した。
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