少女のアルバム

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あの頃の思い出は、友人の少女と、少女の私。そして、友人が持っていたカメラで埋め尽くされている。実際、当時の彼女はなにかというとカメラを構え、記録していた。 彼女のアルバムには、彼女が撮った、たくさんの写真が納められている。 「ねえ、もう帰ろうよお」 「まだ」 暦の上では春のような、雪がちらちらと降り積もった日。友人と私は近所の公園に来ていた。彼女は私を放って、一人でシャッターを切っていた。 寒くて息は白いし、手袋をしているにも関わらず手はかじかむ。友人は手袋すらしていないが、寒さを全く気にする様子がなかった。 幾度も私は帰ろうと主張したが、彼女は納得いかないようにまだ、と繰り返すのみだった。 いつも思うのだ。なぜ私は、写真を撮ることに夢中なこの友人について来てしまうのだろうか。放っておかれるし、私自身写真に興味があるわけではないのに。 本当に帰ってしまおうか、そう思って友人の顔を見たとき、私はああ、と納得した。 ああ、これだ。私は、このためにいつも彼女と一緒にいるんだ。 私は素早く自分の手袋をはずし、スマートフォンを取り出した。かじかむ手に、はあ、と白い息を吐きかけながらアプリケーションのカメラを起動する。 かしゃっ 写真を撮られていることに気づいた友人がこちらを見た。納得のいく写真を撮り終えたから。 「撮り終わったの?帰る?」 「うん。いま、いく」 かしゃっ 何で私のことを撮ってるんだろう、そんな顔をしてこっちを見てくるので、私はつい笑ってしまう。 「さて、と!ね、あったかいものでも食べて帰ろ」 「うん」 あのとき友人が撮っていた写真は、特に何かの賞に応募するわけでもなく、現像し、彼女自身がアルバムにしまっている。 多くの人にとってそうであるように、彼女にとってもカメラは、思い出を記録するものだったのだと思う。もちろん、私にとってもそうだ。 私の当時のアルバムは、写真を撮る彼女の写真で埋め尽くされている。
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