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悪い縁はぶった切っていく所存です
「もう別れたい」
「そんなこと言うなよ。俺には美月が必要なんだよ」
何度目かのやり取りで、結局話はうやむやになった。
キスを交わすと、その瞬間だけは自分が世界一幸せだと思えた。
結婚式に向けて打ち合わせをしている新郎新婦にはもめるカップルも多い。
そういう姿を見ると、美月は安心するのだ。
結婚が幸せのすべてではない。
式の準備は結婚が恋から現実に変わる瞬間でもある。
お金、両親との関係、ふたりの価値観の違い。
結婚しても不幸せなカップルがいるんだ。
そして、課長夫婦もその中のひとつなのだ。
結婚してなお不倫する夫。
抱きしめられるだけで、結婚しているよりもずっと幸せだと思える。
けれど、倉庫から出てあかねに出くわした瞬間、その思いは吹き飛んだのだ。
あかねは責めるような目つきだった。
知ってしまったのだ。不倫のことを。
あかねは美月の願いだった。
不倫何て、法を犯し、他人を不幸に落とすような恋愛をしている自分の、純粋に誰かと結ばれて幸せになる願い。
けれど、一方でそうはならない自分がいる。
何も考えていない、平和な顔がムカつく。
この世に不倫何て言葉もないかのようなその目が。
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