非現実主義

腕輪

結局泣いてしまったあたしを、彼は見たんだろうか。
本当に彼を観て居たのは、あたしの方だけだったんだろうか。
人は簡単に、薄っぺらく、嘘をつくから。
彼があたしに言う、最近古着屋で買ったと言った服も、実は嫌いなその女と一緒に買ったもので、パーキングエリアで買ったといった煙草ケースも、あぁ、そのパーキングエリアへ寄った時、あたしの嫌いなその女も一緒に居たのかもしれない。
何も、分からない。
あたしは、彼のことが、本当は何も、分からない。
彼が、あたしが帰った後に、あたしが居ないことを探していたことを知って、結局、彼の気持ちが全く分からない侭、あたしはひとりで泣いて、彼の目を避けた。
酷く、狡い人だ。
本当に、凄く狡い人。
無理なら無理って、早く言ってよ。
女が居るならお前の気持ちはどう得たって成就しないって、言ってよ。
可能性をちらつかせて、あたしに救われている、何て、言わないでよ。
知りたくないことも知れてしまう世界、調べようとしなくたって、知りたくないことで傷ついてしまう世界。