永い一日

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永い一日

黒服の客人が、同じ袋をぶら提げて順々に帰って行く。 一人は足早に、一人は世間話をしながら、また一人は何度も振り返っては、会釈、会釈で危なっかしい。 二日ぶりに庭木の姿がきちんと見えるようになり、襖も立てて部屋の形が元に戻る。 慣れないネクタイを下に引っ張り、窮屈な首をグルリと回しながら台所へと歩いた。 丁寧に裏返されたポットと、湯飲みが所狭しと並ぶ流し台。湯を沸かす手間が先に立ち一息つくのも諦めた。ええぃ風呂も面倒だ、今日はこのまま寝てしまおう。兎にも角にも横になりたい。眠いわけではなかったが、床に吸い込まれそうなほど、ただ体が重いのだ。 翌朝、嘘のように軽くなった自分を従えて、真っ先に台所へと向かう。椅子にかけられた前掛けを、どうにか腰に縛りつけ朝飯作りにとりかかった。 好物の辛口鮭に、粗塩をふって塩焼きに。ネギと豆腐はぶつ切りにしてそのまま雪平鍋へ。味噌を入れたらグツグツと煮込む。熱したフライパンに玉子を割ると、途端に白身が波打つように暴れだし黄色い地図のような目玉焼きもできた。     
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