永い一日

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なんだか満足感のない朝飯を食い、突っついた楊枝を空の茶碗にひょいと転がすと、付けたままのテレビから天気予報が流れ始めた。今日は一日雨もなく洗濯日和だと伝える予報士は、いつもよりもずっとニヤついていて、とても鼻につく。 ふと、右に向けた視線の先でテレビ台にかかるホコリが目に入った。人の出入りが激しかったせいか、気がつけばあちらこちらに真新しいほこりが降り注いでいるではないか。 腹ごなしに調度いい、茶碗を洗って掃除でもしよう。 バケツに水をくみ、掃除機のコンセントを力いっぱいさしこむ。タオルをハチマキにして気合を入れ、玄関にあるハタキをつかんだが雑巾が見当たらない。洗面所の下、台所の棚、外の物置、どこにもない。 ぞうきん一枚を捜索するのに、何時間かけるのかとため息をつきながら、それでもぞうきん探しが止められないのだ。 古いタオルをおろして丁寧に縫い上げられたぞうきん。確か、白地のタオルに電気屋の名前が入っていたはずだ。棚を滑るように動き、障子の桟を拭き取って板の間を左右に走っていたあのぞうきんが、なぜ見つからないのか。 なぜ、ないんだ。 息を切らしそこらじゅうのものをひっくり返しながら、無我夢中でぞうきんを探した。 一日中動き回ってクタクタなのに、まだ日も暮れない。まるで誰かに時間を延ばされてるようだ。 居間に大の字になって寝ころぶと、驚くほど速く自分のいびきが聞こえ始めたが、なんだか様子がおかしい。     
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