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『世界旅行』
翌朝、グランパの容態は悪化した。
それは命の灯火を灯すロウソクがゆっくりと溶けていくように、花がしおれていくように。
呼吸は徐々に浅くなっていく。
グランマはグランパの手をそっと握っていた。
リタは脆弱な吐息の中から聞こえるグランパの言葉に耳を傾けていた。
その内容はトランクケースを開けてほしいということだった。
使い古されたトランクケースを開けると1冊の絵本と添えられるようにして1枚のメッセージカードが入っていた。
メッセージカードには『リタ、お誕生日おめでとう』と書かれている。
リタは湧き上がる感情をあらわにして
「グランパ……これ……」
と言った。
グランパは力なく暖かに微笑む。
「仕掛け絵本を読んでごらん」と促しているようだった。
絵本を手に取る。
タイトルは『世界旅行』。
表紙には成長したリタ、グランパ、グランマ、そして今は亡き両親が描かれている。
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