第1章(イタズラ)

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 夏休みのある夜、俺(黒木ヒロ)は、うなされて2時頃に目が覚める。すると、外が明るかった。陽の光じゃない。障子越しに『ホァンホァン』と聴こえてくる。俺は、障子を開ける勇気がなかった。14歳なのに怖じ気づいてしまった。すると、意識が遠退いた。  俺は気が付くと、朝の8時だった。何だったんだ、昨日の。夢か?  俺はリビングへ行くと、父さんと母さんが朝御飯を食べていた。 「ヒロ、おはよう。遅かったわね。夏休みだからって気を抜いてると、柔道の昇段試験に受からないわよ」 「柔道がダメでも、サッカーで結果を残すよ」 「ヒロ、おはよう。保険をかけてるんじゃないだろうね?」 「高校に進学したら一本に絞るよ」 「あと1年半よ。柔道もサッカーも甘くないわよ?」 「サッカーはレギュラーだし、柔道は1級まできたし。じゃあ、部活に行ってきます」 「朝食くらい摂っていきなさい」 「そうよ。育ち盛りなんだから」 「いい。部活の朝練に間に合わないから」  俺は自転車に乗り、学校に向かう。すると、自宅の自販機の脇に発泡スチロールの箱が置いてあった。ゴミ……またか。恐らく、隣近所の実(みのる)君の仕業だろう。前は自販機の釣り銭の口にゴミを詰められてた。決め付けちゃいけないけど、十中八九、実君が犯人だ。50歳にもなるのに、何やってんだか。父さんに早く防犯カメラの設置をしてもらわないと。明日は俺も手伝うか。  10分くらいで飯田ヶ丘中学校の駐輪場に着く。 「黒木、遅いぞ!」サッカー部の顧問、中田先生だ。 「倒れてたお婆さんを助けてました」 「嘘が下手すぎる!」  冗談のつもりだったけど、中田先生は相変わらず、実直と言うか、石頭と言うか。 「すみません、アハハ」 「笑うな。レギュラーだからって軽く見てないか?」 「柔道もやってるので」 「サッカー一本に絞ったらどうだ? 中2で身長178センチメートル、真面目にやれば、将来は立派なセンターフォワードに成れるぞ」 「せめて、初段は取っておきたいんてす」 「そうか、あんまりハードワークするなよ」  俺は急いで校庭に行く。飯田ヶ丘中学校はサッカーの強豪、とまではないが、過去に県大会で準決勝まで行った事がある。  他の部員がロードワークをしていた。俺はシレッと集団の後方に入る。
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