第1章(イタズラ)

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「黒木はサボるの上手いよな」同じクラスの鴨川。背番号10のミッドフィルダーだ。 「自然と身に付いたよ、アハハ」 「中田先生がわざわざ待っててくれたんだよ?」 「そんなに期待されてもな~」 「3年生は朝練がないからって……1年生に示しが」 「明日は部活ないし、ゆっくりしよ」 「もう宿題は終わったのか?」 「夏休みの宿題なんて最終日にまとめてやるさ」 「相変わらず、呑気だな~」 「防犯カメラの設置も多分、明日にやるよ」 「例のイタズラか?」 「そうだよ、迷惑な隣人が居るからね」 「それにしても、自宅に自販機があるなんて良いよな~」 「近くに工場があるからね。勿論、家族でも金を取られるけど、アハハ」  校庭を15周して終わりだ。俺は13周しかしてないけど。ストレッチはやってない、怪我をしなくて良かった。  帰り、俺は自転車に乗ろうとした時、サッカー部の後輩の中村が話しかけてきた。 「黒木先輩、一緒に帰りませんか? 色々教えて下さい」  同じく後輩のカルロスも居た。中村はミッドフィルダーでリザーブだが、1年生でベンチ入りだ。カルロスはブラジル人とのハーフで背はそんなに高くないが足が速い。 「良いけど、2人とも歩いて来たの?」 「走って来ました」 「アハハ、元気だね」  俺は自転車を引き、3人で歩いて帰る。 「柔道ってサッカーに活かされますか?」  カルロスが質問をしてきた。 「怪我しなくなるらしいよ。柔道で怪我したら意味ないけど。無理して取り入れる事ないよ」 「そうなんですか~」 「俺は好きでやってるだけだから」 「食事はどんなメニューを?」 「取り敢えず、朝は食べる事。それとプロテインだ」  俺は胸が痛い。分かっちゃいるが、ついつい朝御飯を抜いてしまう。 ――俺は自宅の前に着く。 「じゃあ俺はここで」 「お疲れ様でしたー!」  2人は帰って行った。俺は自販機を見ると、発泡スチロールの箱がなくなっていた。実君の奴、何がしたいんだ? すると、母さんが家から出てきた。 「ヒロ! 防犯カメラを取り付けたよ。ほら、あそこ見て」  2階のベランダに防犯カメラが設置されていた。 「なんだ、言ってくれりゃ、手伝ったのに」 「お父さんが1人でやってくれたのよ」 「何でわざわざ家から出てきたの?」 「映ってみたかったのよ。遅いけど朝御飯を食べなさい」
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