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第五章 逃亡
その後ヘトヘトに疲れ果てていた私たちは、ほとんど何の会話をする事もなく、寝てしまった。
みんなが寝たあとも、わたしは一人眠ることが出来ず、今日の見張りの菜奈のもとへ向かう事にした。
「眠れないのですか?」
私の存在に気づいた菜奈は、それだけ言って私の返答を待った。
「うん、ちょっとね。あんな事があってこれからどうなるんだろうって心配で。」
「それはそうでしょうね。当たり前の事です。実際、私だってそうですから。」
そう言って、菜奈は私の方へ向いた。
「………。」何かを言おうとしたように口を開け、何も言えずに菜奈はまた前を向く。
それから静かに時間は過ぎていった。そして、菜奈は自分の思いに整理がついたように少しづつ、私にいろんなことを話し始めた。
「私は、中学生の頃、皆から嫌われて除け者にされていたです。誰からも話しかけられず、見られず、私はこのままずっと一人で生きていくんだと思っていたです。そんな私に話しかけて来てくれたのが由佳でした。」
そう懐かしむように上を仰ぎながら、菜奈はゆっくりと言葉を紡いだ。
「いつもそばにいてくれて、毎日話しかけてきてくれて、由佳と話しているのが楽しくて私は、いつの日からかネガティブだった私を忘れることができたです。私は由佳から生きる希望をもらったです。だから、由佳は私の命の恩人です。」
そこまで言うと、菜奈は恥ずかしそうに下を向き始めた。
「だから…その…」
そして数秒後、菜奈は意を決したように叫んだ。
「私は、由佳の事を好きになってもいいですか!」
そう叫んで菜奈はを赤くしながら、私の事をじっと見つめてくる。
私は少し動揺したが、家族以外から「好き」なんて言葉を言われたことなんてなかったし、その言葉を言ってくれたのが菜奈だった事もあり、とにかく私は嬉しくて「うん、もちろん!」笑顔でと答えた。そしてそう答えた後に、私は色々な考えが頭に浮かんで慌て始めた。
「あれ、でもこれって百合なわけだから法律的にアウトなんじゃ!それにこ、子供!子供どうしよう!あわわわ!」
そんな私を見て菜奈は楽しそうに笑った。
「フフ、アハハハ!やっぱり由佳は面白いですね。今が危険な状態だって言うことも忘れちゃいます。それに、こんな壊れた世界で、法律も何もないと思うですよ。」
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