第三章 助け合い

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第三章 助け合い

「由佳、起きなよ。もう朝だよ?」 恵実の声がする。とても遠くて、か細い声。私は水の中に沈んでいくような感覚を覚え、少しだけ目を開いた。そして絶句した。恵実の頭と脇腹の部分には夜鬼が喰らいつき、恵実は笑いながら、泣いていた。 「由佳…助…けて……。」 「恵実!」 そこで目が覚めた。自分が今どこにいるのかを確認して大きく深呼吸をする。ひどい悪夢だった。あんな夢はもう見たくない。それに。 「あの夜鬼は…、何?」 由佳が夢で見た夜鬼には輪郭の中心部に大きな一つ目があった。口は笑っているように大きく開かれ、私のことをじっと見ていた。今思い出しても寒気が走る。 それから由佳はもう一度寝る気にはなれず、見張りをしていた菜奈の所へ行き、今の夢の事を話した。 「それは奇妙ですね。そんなやつが今日の移動に出てこなければいいですが。」 「うん。そうだね。私はこれ以上大切な人を失いたくないよ。早く安全なところに行きたい。」 私が震えながらそう言うと、菜奈は優しく私の頭を撫でてくれた。 「昔、母が私が泣いていたときに、こうやって私の頭を撫でてくれました。私は、人が泣いてるときどうすればいいかわかりません。ですが、私がいる限りこの中から死傷者を出すようなことはないので、そこはご心配なく。」 そういうと菜奈は私の方を向いて、笑ってくれた。そんな菜奈に私も笑顔で答えた。そうしているうちに夜は明け、私の心は次第に落ち着いていった。
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