先生!

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10年前。 私は蒔田(まきた)中学校に教育実習に行った。 本当に教員になりたかったわけじゃない。 いざという時の保険に、教員免許が欲しかっただけ。 高岡晴生(たかおか はるき)は、指導教諭が担任するクラスにいた。 クラスのリーダー的存在で、誰からも人気がある子だった。 授業も、彼がまじめにがんばる時は、とてもスムーズに進む。 ところが、彼がふざけモードに入ると、クラス全体がふざけて崩れてしまう。 よくも悪くも、そんなリーダーのカリスマ性を持った子だった。 実習期間中にあった体育祭では、彼は誰よりも輝いていた。 応援団長として、声をからして赤団を引っ張っている姿は、とても凛々しく、きっと何人もの女子が惚れるんだろうなと思った。 競技最期の選手リレーでは、アンカーとして登場し、最下位からゴボウ抜きして1位になった直後、転んで3位で終わった。 ゴール直後、一瞬、悔しそうに唇を噛んだが、その後すぐに笑って、 「わりぃ、転んじゃったぁ。」 と笑っていた。 この時、私は、 この子は中学生なのに周りを気遣って自分の感情を殺せる子なんだ と感心した事を覚えている。
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