1178人が本棚に入れています
本棚に追加
とりあえず、今日は、課長が来てくれる日だ。
私は、少しうきうきしながら、帰路に就く。
会社付近は、人目につくので、いつも自宅最寄り駅で待ち合わせる。
課長と駅で合流して、買い物に行く。
「課長、何食べたいですか?」
カートを押す課長の腕に掴まるように腕を絡めて歩く。
「ん~、この前の豆腐ハンバーグがまた
食べたいなぁ。」
「はい!」
課長のリクエストが嬉しくて、私は材料を籠の中にポイポイと入れる。
ワンルームの狭いキッチンで2人分の夕飯を作り、ローテーブルを挟んで2人で食べる。
「うん、おいしい。
里奈は優しくて綺麗で料理も上手で、非の
打ち所がないね。」
「そんな…」
照れて俯くと、課長が私の前髪をかき上げる。
「ふふっ
里奈はかわいいなぁ。」
私はますます顔を上げられなくなった。
「こんなかわいいから、高岡くんも里奈に
惚れちゃうんだろうね。
里奈はどうなの?
高岡くんの事、気になってる?」
私は首を横にブンブンと振った。
「でも、やっぱりおじさんより、年下の
かわいい子の方がいいんじゃない?」
「私が好きなのは、課長だけですから。」
赤くなる私を見て、課長は満足そうに微笑んだ。
「俺も里奈が好きだ。
里奈に1番に会いたかった。
そしたら…」
課長は、続く言葉を飲み込んだ。
私たちは束の間の逢瀬を楽しんだ。
そしてその後、立ち去る課長の足音を聞いて、張り裂けそうになる胸を押さえて、眠れない夜を過ごした。
最初のコメントを投稿しよう!