私が好きなのは

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「ちょ、ちょっと、待って。」 私が声を掛けるけど、晴生くんは待ってくれない。 「待ったら、里奈さん、逃げるでしょ?」 と晴生くんは悪びれもせず笑う。 駅に向かっているのかと思いきや、晴生くんは駅前のタワーマンションに入った。 コンシェルジュさんが、 「おかえりなさいませ。」 と声を掛ける。 「ただいま!」 子供のように明るく挨拶を返す晴生くんは、あの頃の中学生のままだ。 エレベーターで11階に上がる。 「ごめんね。 最上階を期待したよね? 俺、分不相応な贅沢嫌いだから、そんなに 広い部屋には住んでないんだ。」 そう言って彼がドアを開けた部屋は、私のワンルームとは比べものにならない位、広くて豪華だった。 「ふふっ やっぱりお坊ちゃんなんですね。 これは、十分贅沢なお部屋ですよ?」 と私が言うと、晴生くんは目を輝かせた。 「里奈さん、初めて笑ってくれた。」 「え?」 そうだったかな? 私、いつも、そんな怖い顔してた?
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