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昼間、公園ではあんなに饒舌だった晴生くんが、ほとんど喋らない。
人もまばらな水族館の一角で、晴生くんは、私の髪を指に絡めながら、ライトアップされた水槽を眺める。
私はどうしていいか分からず、されるがまま同じように水槽を眺めていた。
その時、髪を触っていた手が、後ろ髪に添えられ、身をかがめた晴生くんの顔が近づいて来た。
水槽を見つめていた私は、気づくのが一瞬遅れた。
晴生くんの唇が、私のそれに優しく触れて、離れていく。
「里奈さん、好きです。」
晴生くんは、優しく囁いて、私を抱き寄せた。
「もう離したくない。
里奈さん、俺との事、真剣に考えてください。」
相変わらず、私の心臓は過剰労働真っ最中だ。
だけど、晴生くんの腕の中の温もりは、なんだか心地よくて、抗えないでいる。
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