サラマンダーの子

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「いいか、コイツのコツは最後まで手を離さないことだ」  そう言って、綺麗な赤色の眸を湛えた男の人は僕の腕を強引に取って、道端に転がったラッドリィハウンド(赤い猟犬)のお腹へと押し付けた。  生暖かい真っ黒な赤色が気持ち悪くて、つんと鼻をつく臭いが気持ち悪くて、震え出す僕の手の甲を強く押して、もう一度男の人は言った。 「手を離すな、最後まで」  ピチャピチャと手を伝って地面へと伝わるその赤色に声を上げそうになるのを我慢して、代わりに大きく息を吐き出して。  その光が見えたのは数秒後。眩いほどの白の光が、血塗れの体も、燃え盛る街並みも、赤目の男の人も、僕のこの赤毛も、赤、赤、赤ーー全ての赤色を呑み込んでいく。  その光は、確かに僕の手から発せられた。争いが産み出す全てのものを消し去るような、そんな慈愛の光がーー。
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