18 オモイカネ神動乱

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 おびえる少女は、遠くから母親の呼ぶ声がして、ほっとした表情になり、すぐに、駆け出そうとする。  が、その子の腕を、その男は、掴んだ。  「私を、置いていかないでくれ」  振り返って男の顔を見た時、男が開いている方の腕で少女の頭に触った。  「ずっと、一緒にいよう」  恐怖にひきつる少女の顔を見て、それは、言った。  「シノブ」  鈍い音がして、男が、少女の頭部をねじ切った。    少女の母親が駆け付けたとき。  その光景を見たとき、その血まみれの肉塊が自分の子だとは、わからなかった。  ただ、その男が両手で抱えて、かぶりついているいたものを見て、彼女は、悲鳴を上げた。  男は、少女の頭を割って、その脳髄を食べていた。  がつがつとむさぼっている男の姿を、母親は、その場に座り込んで呆然と見ていた。  「ここにも、いたのか」  男は、血涙を流しながら、少女の母親の方へと手を伸ばした。  「シノブ」  それから、何人もの犠牲者が続いた後、イナリ神は、街に警報を出した。  地元のテレビ局などが一斉にイナリ神の言葉を伝えた。  「街に住む想像者の皆さん」  アナウンサーがイナリ神の言葉を繰り返した。  「一刻も早く、海上へと非難してください」  港は、海へと逃れようとする想像者とその家族でごった返していた。     
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