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想像者の病と呼ばれるそれは、30年ぐらい前に確認されてから、そっと静かに世界を犯していった。
それは、その名の通り心の中で想像することを現実の世界にリンクしてしまうという病だった。
例えば、おなかがすいたとき、食べ物を想像する。
だけど、それは、現実には、存在しないはずのものだった。
けれども、想像者にとっては、違う。
想像者にとっては、それは、まぎれもない現実となるのだ。
実際には、出来ることは、個人個人で差があり、能力は、限られていることが多いのだが、天野少年には、確かにその能力があった。
もっとも、彼の能力は、この世界にとって何の影響も及ぼさない小さな能力だった。
それゆえに、彼は、生まれた時から、タグ付きだった。
ところで、いったい誰が彼の家と家族を奪ったのだろうか。
「神が」
それは、隣家の中年オヤジから知らされた。
「現れた」
呆然と立ち尽くす天野少年に、オヤジは、言った。
「神がお前の家族を連れ去った。返してほしければ、神門所に来るようにとの事だ」
オヤジは、無言で自分を見つめる少年の肩を軽くポンと叩いて言った。
「お前たちは、まだ、運がいい。返してもらえる可能性が残っているんだから」
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