3 目覚める時は、いつも、不機嫌

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3 目覚める時は、いつも、不機嫌

 天野少年は、海上にいた。  薄暗い曇天の空とさらに、暗い海原が広がっていた。  「こんなことになるなんて」  彼は、足元の黒猫に話しかける。  「全く馬鹿なはなしだよな」  黒猫は、無口なたちなのか、にゃあとも言わずに彼を見上げてにやりと笑った。  その船は、神に仕える神官たちが属する神官庁の船だった。  天野少年は、数日前にイナリ神の命を受け、スサノオ神の管轄下にある日本地区の神官庁の神官である畑中神官とツクヨミ神が予言した最凶の想像者の眠る島を目指していた。  それは、日本地区の南端にある小さな地図にも乗らないような島だった。  人も住まない、神も居ない島であるためにその島は、神無島と呼ばれていた。  岩ばかりの小さな島の中央に岩屋があり、小さな石作りの鳥居がある。  そこに眠る者を封印することが、天野少年に課せられた役目だった。  だが、それは、正しいことなのか。  そう、天野少年は、何度も自問していた。  それは、今の狂った世界を変える存在だった。  今の神による統治が行われている世界は、おかしい。  彼は、学校の勉強は、それ程できるわけでは、なかった。     
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