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1 神と猫と少年と
神は、死んだとニーチェは、言った。
彼がそれを知っていたかどうかは、僕は知らないけど、確かに、その日、彼は、それが本当だったらどんなにかよかっただろうと思っていたことだろう。
彼の名前は、天野 保。16歳の高校二年生。
特に、人より秀でたこともなく、趣味もない。なんの変哲もないただの少年だった。
たった二つのことを除いては。
一つ目。
学校から帰って、母親に買い物を頼まれ、コンビニから帰ってくると家が消えていた。
壊されたとか、そんな話ではない。
建っていた場所ごと、何かにえぐられた様に消滅していた。
彼にとっては、それだけでもかなりショックだったが、何より信じられないのは、その中にいた家族ー父母と妹ーとも、連絡がとれなくなったということだった。
そして、二つ目。
彼が子供の頃から、周囲の人々にタグ付きと呼ばれていたこと。
タグというのは、洋服を買ったときに付いているあのタグのことでは、もちろん、ない。
タグというのは、ウィルスのキャリアーだという証だった。
それは、DNAの中に眠っている人類には、解読不能な病のウイルスだった。
病の名は、クリエーターシンドローム。
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