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4 封印された女王と拒否権のない少年
「では、イナリという名の支配神に、家族を人質に取られて海の女王を封印するように命じられたというわけか」
窓もない船の一室で捕らえられた天野少年は、ソファに腰かけクロを抱いてスカーフェイスを見上げていた。
「最凶の想像者、か」
「確かに、神にとっては、そうなのかもしれないな」
部屋の奥の壁にもたれて立っていた金髪の男が笑った。
その男と向き合った椅子に腰かけている黒髪の男が面白くもなさそうな様子で言った。
「危険なのは、神にとってだけではないかもしれないがな」
「どういうことだ、王龍」
金髪の男が王龍と呼ばれた男を興味深げにみた。
「まさか、女王が我々に弓引く者だとでも」
「そうじゃない」
王龍の横に立っていた王龍とそっくりな顔をした眼鏡の男が言った。
「本当にあれが、我々の探している海の女王なのか、ということを王龍は、言っている」
「間違いないよ」
部屋の隅で様子をうかがっていた車いすの男、夢魔が口を開いた。
「どんな姿であろうと、あの人は、海の女王に間違いない」
「男なのに、女王、か」
金髪が声を立てて笑う。
王龍が咳ばらいをする。
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